ポジショニング、価格、製品、利益|『コトラーのマーケティング・コンセプト』読解メモ #16

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課題本として、「コトラーマーケティング・コンセプト」を設定したので読み進めていきます。

コトラーのマーケティング・コンセプト | 東洋経済STORE

#1ではまえがきと序文について、#2以降では3~4トピックずつ取り扱っています。

#15では機会(Opportunity)、組織(Organization)、アウトソーシング(Outsourcing)、業績評価(Performance Measurement)について取り扱いました。

#16ではポジショニング(Positioning)、価格(Price)、製品(Products)、利益(Profits)について取り扱います。
以下、目次になります。
1. ポジショニング(Positioning)
2. 価格(Price)
3. 製品(Products)
4. 利益(Profits)
5. 感想・まとめ

 

1. ポジショニング_Positioning(簡単な要約)
「ポジショニング」という言葉がマーケティングの世界にもたらされたのは、1982年のアル・ライズ(Al Ries)とジャック・トラウト(Jack Trout)の"Positioning: The Battle for Your Mind"によってである。ポジショニングとは製品をどこに置くかという話ではなく、見込み客のマインドの中にどう位置付けるかという話である。つまり、ボルボが「最も安全な車」、BMWが「究極のドライビング・マシン」、ポルシェが「世界最高の小型スポーツカー」を謳っていること、それがポジショニングである。
企業は様々な観点から自社製品の特徴や利点を訴えることができる。具体的には、より速い、より安全、より安い、より便利、より長持ち等、挙げだしたらきりがない。だが、ライズとトラウトは購入者のマインドに強いインパクトを与えるにはそのうちの1つに集中する必要があると強調する。彼らはポジショニングを何よりもコミュニケーションの問題として捉えている。特定の顧客グループが自分たちの重視する観点に照らして最高のものとみなさない限り、製品のポジショニングは不十分であり、人々の記憶に残ることもできない。
企業が(企業規模その他の属性に照らして)市場でナンバーワンに位置していなくても心配する必要はない。別の属性に着目し、そこでナンバーワンになれば良い。この際に多くの属性を取り上げる必要はない。いくつもの属性を取り上げその優秀性を訴えたとしても消費者は覚えきれないし信用もしない。
マイケル・トレーシー(Michael Treacy)とフレッド・ウィアセーマ(Fred Wiersema)はポジショニングを大きく3つに分類している。すなわち製品リーダーシップ、オペレーションの卓越性、カスタマー・インティマシー(顧客との親密さ)である。トレーシーとウィアセーマはこれら3つの価値基準の1つにおいてリーダーとしての定評を獲得し、残り2つに関しては少なくとも十分とみなされるレベルに達するようにアドバイスしている。
最も効果的なポジショニングは、独特で容易に模倣できないポジションを占めることである。これまでのところ、イケア、ハーレー・ダビッドソン、サウスウェスト航空、ニュートロジーナを模倣して成功した企業はない。とはいえどんなポジショニングであれ、その効果は永久的なものではない。そのため企業は、消費者、競合他社、テクノロジー、経済情勢の変化に応じて主要ブランドのポジショニングを見直す必要がある。


2. 価格_Price(簡単な要約)
製品の価格の設定において、価格をあまりにも安く設定すると売上は伸びるが利益はほとんどあげることができない。その上、望ましくない顧客(少しでも安く買おうと他社製品にスイッチする顧客)を惹きつけることになる。逆に価格が高すぎる場合は売上も顧客も逃してしまう可能性がある。またピーター・ドラッカー(Peter Drucker)が指摘するように、「プレミアム価格をありがたがる企業は、競合他社のために市場を創造している」ことにもなりかねない。
一般的な価格設定の方法はコストを決定し利益を加算するというものであるが、コストは顧客が製品に価値を認めるかどうかとは全く無関係な要素である。コストとはそもそも当該製品に着手するかどうかを決定する際の判断材料にすぎない。価格を設定したからといって価格を売り物にしてはならず、価値を売り物にすべきである。
グローバル化、ハイパーコンペティション、インターネットが市場とビジネスの枠組みを大きく変えようとしている。この3つはいずれも価格引き下げに拍車をかける要因となっている。こうしたマクロトレンドの中にあって、いかにして価格と収益性を維持していくか、この方法を探ることこそマーケティングの課題である。その答えとしては、より適切な市場細分化、より強固なブランディング、より卓越した顧客関係のマネジメントということになると思われる。


3. 製品_Products(簡単な要約)
ハーバード大学の教授のセオドア・レビット(Theodore Livitt)は、製品にこだわり根本的なニーズを見落とすことの危険性を以前より指摘していた。レビットは鉄道業界を引き合いに出し、彼らが自らを輸送産業と位置付けることができず、トラックや航空機の脅威を見落とすという「マーケティング・マイオピア(近視眼)」に陥っていたと述べている。
では企業は自社の販売物をどのようにして決定するのであろうか。決定の方法には以下の4つがある。

1) すでに存在するものを販売する
2) 顧客の求めるものを作る
3) 顧客が将来求めるものを予測する
4) 誰も求めていないが購入者に大きな喜びを与えるであろうものを作る

最後の方法をとった場合、リスクは極めて大きくなるが、大きな利益をあげるチャンスでもある。
単に製品を売るのではなく、経験を売らなくてはならない。ハーレー・ダビッドソンが売っているものは単なるオートバイ以上のもので、ハーレーのオーナーになるという経験である。同社は会員制のオーナー交流会やアドベンチャーツアーなども企画しており、ライフスタイルを売っている。同社のトータルプロダクトはオートバイそのものをはるかに凌駕する。
また、経済成長が鈍化した時期には少数の強力なブランドに資源を集中的に投入する必要がある。強力なブランドとは、プレミアム価格を設定できる、市場シェアがトップの高ロイヤルティ・ブランドで、関連するカテゴリーへの拡張が可能なブランドのことである。例えばユニリーバも1,600あったブランドを整理し、莫大な広告予算とプロモーション予算を400の強力ブランドに集中させるという決断を下している。
製品ポートフォリオが貧弱極まりない企業は実に多い。そのような企業は自分たちが支配的な地位を得たいと考える市場の様々な部門へ進出すると良い。

4. 利益_Profits(簡単な要約)
企業が当面の利益の最大化を目指すべきかどうかと考えると答えはノーである。ゼロサム思考は誤りであり、ゼロサムの競争ではやがて企業は疲弊していく。
今日勝利を収めている企業は、マーケティングのポジティブサム理論を実践している企業である。彼らは優秀な供給業者、優秀な社員、優秀な流通業者、優秀なディーラーと契約を結ぶ。そしてそれぞれの関係者にとって有利な結果を得るためにチームとなって動く。これによって企業はより一層の成功を手にすることができる。


5. 感想・まとめ
#16ではポジショニング(Positioning)、価格(Price)、製品(Products)、利益(Profits)について取り扱いました。元々知ってはいましたが、ポジショニングについてが一番興味深く、意識することの多い考え方だと思いました。何にフォーカスするかをはっきりすることで、どういう印象を顧客に与えていくかというのは非常に重要だと思います。
#17ではパブリック・リレーションズ以降を取り扱っていきます。